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2004年2月 7日 (土)

ケンちゃんの101回信じてよかった

宮脇康之著/講談社

 1997年に「名子役の虚構—ケンちゃんの真実」(パラス)という自叙伝を出版したものの、確か刊行直後に版元が倒産、本は一般にはほとんど流通しなかったはずだ。
 テレビや雑誌で報道される「中学でアル中」「AV出演」「SMショー」「実兄自殺未遂」「沖縄で地上げ屋」といった波瀾万丈、スキャンダラスな半生について書かれていると思しき本である。杉田かおると双璧をなすと推測される壮絶な人気子役人生。是非読んでみたかった。

 と、思ったら、今年、講談社から再び自伝発行。題して「ケンちゃんの101回信じてよかった」
 中身は一緒なのかどうかわからないが、「名子役の虚構」という書名に比べると、かなりポジティブな書名になった。あとがきによると、事業に成功して莫大な借金の返済が終わったところだという。1997年と2004年の彼の生活状況の違いがタイトルにあらわれているのかもしれない。

 さて、あの杉田かおるを超える怖ろしい話が読めるのではないかと期待したものの、内容は先にあげた「中学でアル中」「AV出演」「SMショー」…といった今までどこかで見たり聞いたりした話がほとんど。
 たとえば「子役時代に母親役の女優に馴れ馴れしい口をきいたADに腹を立てクビにさせた」というエピソードが語られるのだが、確かに「生意気な子役」ではあるかもしれないが、見方を変えれば「子役時代からプロ意識の高い俳優だった」ともいえるわけである。他にも故・石原裕次郎、松田優作との和やかな交流であるとか、子役時代の話は案外マイルド。
 子役を卒業してからの借金まみれの転職人生についても、騙されやすい人が借金を抱えていく様子が描かれているだけで、確かに元人気子役としては屈辱的な事ばかりだったろうが、いずれもそれほど際だって珍しい話ではない。
 杉田かおるの「すれっからし」(1999年/小学館文庫)で彼女の怒濤のごとき無頼な半生を読んだ時の驚きに比べると、インパクト不足な感じ。

 ただ1つだけ驚いたことがある。
 堀越学園在校時代、ジャニーズ事務所に籍を置いていたことがあるのだという。当時、「ギャングス」というバンドを組んでいた宮脇は、ジャニー喜多川社長に大層可愛がられていたらしい。しかし、何かトラブルがあり、ジャニーズ事務所の合宿所を飛び出してしまったそうなのだが、その理由はこの本では語られていない。以下のように書かれているだけだ。

ぼくが合宿所を出奔した「原因」については、残念ながら、いまここに書くことはできない。それを明らかにする日は、遠からずやってくるだろうが。

 スターを目指す自意識の強い年頃の少年たちが一緒に生活する合宿所だ。ワガママ三昧をしてきた超人気子役だった宮脇が他の少年たちとうまくやっていけなかったとか、借金、いじめ、恋愛、喧嘩などなど、突然合宿所を飛び出してしまうような理由はいろいろ想像できるわけだが、現在人気タレントを多く抱える現役のプロダクション・ジャニーズ事務所絡みのエピソードゆえ、詳しく書くことができなかったのだろうか。
 いや、今も現役タレントの三原じゅん子との同棲生活や、今も存命の実父の愛人の話や共同経営者に騙され借金を背負った話などを具体的に書いてきた宮脇が、この部分のみ思わせぶりに伏せたのが気になる。ジャニーズ事務所に関する話は一切触れずにおくことも、「ジャニーズ事務所でバンドやってた時期もあった」とさらりと書くことだって出来たはずなのに。
 宮脇および担当編集者の「言いたいことは山ほどあるけど今はコレが限界」といった心の声が聞こえたような気がした。【み】

2月 7, 2004 at 10:34 午前 今日の本 |

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