現代民話考[11] 狸・むじな
松谷みよ子著/ちくま文庫
元来の狸好きである。定年後は狸になって暮らそうと考えているほどである。「現代民話考[8] ラジオ・テレビ局の笑いと怪談」でこのシリーズに少し懲りた私もそんなわけでこの「狸・むじな」の巻は読む気になった。
通して読んでみると、狸ばなしには全国にわたっていくつか共通点があるのがわかる。そのいくつかを紹介しよう。
■狸は人のマネをする
狸は人のやることを見ていて、次の日それを真似るという。結婚式や葬式のあった翌日には、里から見える山の中腹を、提灯を持った狸が列をなして上るのが見える。
中には軍隊のまねをする奴もいて、山小屋の外に夜な夜な出ては「オイッチニーオイッチニー」とかけ声をかけながら足音をさせたという報告もある。
芝居の真似というのもある。里で芝居の興行が済んだ後、やはり夜な夜な太鼓や鉦、三味線の音がどこからともなく聞こえるという。
お月見の真似の話が可愛かった。朝畑のうねにいくつもへこみができているのが見つかり、狸が座って月見をしたのだろう、という話だ。
■狸は少々言葉を話す
狸を獲ったりすると、助けようとするのか仲間が家のまわりに集まって「コンバンワー」と盛んに呼びかけることがある。少々間が抜けて「コンマンワー」と聞こえることもあるらしい。
また狸に「誰だ」と問いかけると、「おらじゃー」と応えるべきところを「ウラジャー」とか「エラジャー」と応えるという。夜娘に化けてそばやに来た狸は、一杯たべおわると「アト、アト」といっておかわりを頼んだという。
いずれも言葉をうまく話せないことになっており、「コンマンワー」などは命乞いをしようにもうまく言葉にできない狸のもどかしさが伝わってくるではないか。
■狸は歌も歌う
本書の中では、「ツーレロ節」「追分のようなもの」を歌った例が報告されている。
■狸は近郊にも住む
本書では、千葉県市川市、浦安市、東京都大田区、中野区、練馬区、葛飾区での狸ばなしも収録されている。東急目蒲線に乗っていた狸の報告もある。
■化けた狸の見分け方
いくつか狸に化かされたときの見分け方が書いてあったので紹介しよう。まず、「狸の手は丸い」。綺麗な娘に化けた時でも、その手を握れば丸いので見分けがつくという。また「夜目なのにはっきり見える」という特徴もある。狸が化けた人間は、暗闇でも着物の模様がはっきり見えるという。では化かされた時はどうしたらよいか。「狸はタバコの煙が嫌い」なので、気を落ち着けて一服すると狸はいなくなっているという。
■狸は最近もでる
本書には1975年、韮崎インター付近で火消しに化けた狸の報告がある。狸、まだまだ現役。
■狸は退治される
かように人を化かす狸だが、あまり人の命にかかわるような悪戯はしない。しかしそれに対する人間の対応たるや酷いものがある。化かしたといっては殴り殺し、鉄砲で撃ち、狸汁にしてしまうのだ。あわれ気の毒な狸よ。狸に幸多かれ。【吉】
2月 24, 2004 at 04:20 午後 今日の本 | Permalink
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