竜巻で390m飛ばされ世界記録達成

　3/12、ミズーリ州で３時間半の間に10以上の竜巻が発生し391軒の住宅が全壊、1,100軒が半壊した。この中フォードランドに住む19歳の学生マット・サッター君は竜巻で約390ｍ吹き飛ばされ、竜巻による移動距離の記録を更新した。
　フォードランド・ハイスクールに通うサッター君は3/12の夜、祖父のトレーラーハウスでソファの上に乗り居間の窓を閉めようとしていた。壁の向こうから聞こえてくる音を彼は信じられなかったという。「ジェット機が10機近づいてくるみたいに、どんどん大きくなってくるんだ。」「急に家の中で風圧を感じた。玄関と裏口のドアの蝶番がとれて吹ドアがき飛んだんだ。台所にいた祖母の方を見ると、壁や天井や床がまるでゼリーみたいに揺れてたんだ。そのうち家全体がひっくり返るのを感じた。」
　重いランプが大きく揺れて頭にあたり彼は気を失った。その時パンツ１枚だった彼は壊れた家の壁から竜巻に吸い出された。風速240kmの風は彼を荒れ狂う嵐の暗闇の中に巻き上げ、鉄条網のフェンスを越える地点まで吹き飛ばした。広い野原の草の上に落ちたため、彼は頭の傷の出血以外は無事だった。
　3/17、国立測候所の職員はGPSを使ってサッター君が飛ばされた距離を測定した。その結果は392m。「これほど遠くまで飛ばされながら無事だった例は知りません。」とバーモント州の竜巻研究家で、竜巻に関する変わった記録を記した「トルネード −究極の嵐("The Tornado −Nature's Ultimate Wind Storm")」の著者トム・グラズリスさんは語る。彼によればサッター君の記録は最近の竜巻の生存者の記録をゆうに超えるという。1955年1月サウスダコタ州バウドルで9歳の少女がポニーと一緒に巻き上げられ300m吹き飛ばされた。もっと遠くまで吹き飛ばされた報告もあるが、ほとんどは信頼性のないものだという。「4万件以上の竜巻に関する新聞記事から、1マイル(1.6km)以上飛ばされた人の記録が１件だけ見つかりましたが、彼は死んでいました。」
　真夜中の嵐の中の出来事だったため、実際にサッター君が着地した場面を見た者はいない。しかし嵐の後サッター君に出会った人々は彼が真実を話していると感じたという。また彼はメディアの注目を引こうともしていない。
　トレーラーハウスの中にいた祖母と体の不自由な叔父はがれきの下から自力で這いだし無事だった。「いつもガールフレンドには竜巻を見てみたいと話していたけど、自分が巻き込まれたくはなかったよ。」とサッター君は語った。(News-Leader.com)
　彼が飛ばされたみちすじ。赤矢印が飛ばされた区間、グレーの矢印が走って逃げた区間。
【吉】