« 2か月間眠り続ける少女:クライン・レビン症候群 | トップページ | イカを食べたらイカの子を「妊娠」? »

2012年6月17日 (日)

ドイツの「森で5年間暮らした少年」は狂言だった

 「森の中で5年間暮らしていた英語を話す身元不明の少年、ドイツで発見」で紹介した少年の身元が判明した。
 彼の名前はRobin van Helsumさん(20)、オランダ人で、家庭の問題から家出をしたものと考えられている。今週ドイツの警察署が公表した写真を親族が見て身元が明らかになった。Helsumさんは15日ベルリンで家族と再会した。「ヴァルトユンゲ(森の少年)」と呼ばれた彼は昨年9月ベルリン市庁舎に現れ、死んだ父親を森の中に埋めた後5日かかってベルリンについたと語っていた。母親はその何年か前に自動車事故で死んだとしていた。彼はホームレスの若者用の施設で保護され、法定後見人が定められ、定期的に検診を受ける一方で心理学者によって真実を語るよう説得が行われてきた。しかし彼はほとんど口を開かないため国籍すら判然としなかった。身元確認のためDNA検査も行われた。
 彼の世話をしていた青年福祉部局の広報担当者が15日発表したところによると、彼の面倒をみた担当者は彼が記憶をなくした孤児でなくむしろ詐欺師であったことにショックをうけているという。「なんといっても彼は気持ちがよく人なつこい青年で、誰ともトラブルを起こしませんでした。それが詐欺師だっただなんて。」とベルリン南部のテンペルホフ-シェーネベルク青年福祉事務所のエド・コッホさんは語った。「この何か月か彼と過ごした人、彼の面倒をみた人にとってはもちろんショックな話です。」コッホさんは家族がVan Helsumさんを迎えにくるまでは福祉事務所は彼の世話を続けるという。
 オランダ東部のトゥウェンテの警察のChantal Westerhoff広報官によれば、Van Helsumさんは昨年の9月2日自宅のあるヘンゲローを立った後すぐ行方不明の届けが出されていた。「彼の継母がまちがいないと確認しましたので、100%確実です。」と広報官は語った。「彼が見つかって喜んでいます。」と継母はいう。彼女は首に巻いた魔除けで彼だとわかったという(なぜ顔じゃなく魔除けで判別するのかは不明:東京福袋註)。しかし彼女はドイツとオランダの当局に対し彼への不満も表明している。「息子はいろんな人にたくさん迷惑をかけてきました。おおいに責任があります。」
 ベルリン警察のミヒャエル・マース広報官は、Van Helsumさんがベルリンを離れるのは自由だが、身分詐称と社会保障給付金詐欺で告訴されるだろうという。「多くの人に面倒をかけ、我々を騙して費用を負担させています。月額数千ユーロにはなるでしょう。」「起訴されることになれば、どこに連絡すればよいかは分かっていますから。」
 Van Helsumさんは警察には生い立ちをほとんど話そうとしなかったが、自分はレイという名で親はライアンとドリーンといい、彼が書いた絵はドイツ人たちに19世紀のカスパー・ハウザーを連想させた。彼と父親は森の洞窟やテントの中で暮らし、木の実やキノコを食べて暮らしていたが、父親が8月に死ぬ直前、自分を埋めて「北へ歩いていき文明のある町へ出て助けを乞え」と指示したと主張していた。
 しかし15日、彼の平凡だが問題の多い子供時代が明るみにでた。両親は彼が2歳の頃離婚し、彼の養育権をめぐって何年もの間争いがあった。最終的に父親のヤンさんが養育権を勝ちとったが、家族が取材に語ったところではこの件が彼の人生に影を落としているという。昨年彼が姿を消した後、両親はツイッターで「行方不明者 ロビン、ヘンゲロー出身の19歳、至急連絡乞う、9月2日より行方不明」と情報を求めていた。
 Westerhoff広報官は、両親から行方不明の届けがなされたが、「彼は成人に達しており、自殺や他人を傷つけるおそれもないので捜査は開始していませんでした。」という。ベルリンの警察はインターポールに彼を未成年者として登録していたため、レイとロビンが結びつかなかった。
 15日継母は地元メディアの取材に泣きながら、精神分析医と相談した後でなければ、公の場で公式な説明をするかどうか決められないと答えた。父親は今年の2月に亡くなっているが、Van Helsumさんが父親の死を知っているかどうかは不明。彼はベルリンから家族に自分は無事だという手紙を出しているという。
 Van Helsumさんのフェイスブックのページでは、彼はマーケティングとコミュニケーションの分野で働く起業家と自称しており、ヘンゲローの電話会社での実務研修を修了したと書いているが実のところは修了していない。趣味は読書とゲームで、好きな言葉はソクラテスの「全ての者の魂は不滅であり、正しい者の魂は不滅で神聖である」だという。好きな本には「ホビットの冒険」「星の王子さま」を挙げており、影響をうけた人物はジョン・F・ケネディ、エラスムス、聖ニコラウスを挙げている。友人によれば彼は子供時代に家庭の問題があり、それから逃げるためにベルリンに向かったのではないかという。「ロビンは個人的な問題をかかえており、新しい人生を始めるための道を選んだんだと思います。」(guardian.co.uk)【吉】

<関連記事>
「『緑のパンツ男』は狂言!?」(2004.1,インドネシア)
「仕事を休む口実に新聞に息子の死亡告知を出したバカップル」(2006.4,アメリカ)
「19年前行方不明の少女、ジャングルで野生化していた」(2007.1,カンボジア)
「8年間野生で育った少年見つかる」(2007.3,ウズベキスタン)
「寝てる間に顔中星を彫られた…は嘘だった!」(2009.6,ベルギー)
「3年前発見され家族の元に帰った『ジャングル女』、再びジャングルへ逃亡」(2010.5,カンボジア)
「カーセックス中の事故を隠すためカージャックをでっちあげた女。しかし真実はまた別のところに…」(2010.7,アメリカ)
「女性が顔に酸をかけられた『硫酸テロ』は狂言だった」(2010.9,アメリカ)
「気球騒ぎの父親、奇抜な発明『ベア・スクラッチ』を引っさげて再登場」(2010.10,アメリカ)
「ズボンを破いた少年、銃で撃たれたと嘘をついて大騒ぎに」(2011.3,アメリカ)
「1940年代インチキ少年伝道師の濃厚人生」(2011.11,アメリカ)

6月 17, 2012 at 01:31 午後 今日のトピックス |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ドイツの「森で5年間暮らした少年」は狂言だった: