盛り塩
料理屋の前で焼き鳥を売っている店がある。人なつこい親父が一人で焼く小さな店だ。
先日、この店に焼き鳥を買いにいき、焼き上がるのを待っていたところ、自転車に乗った常連風の若者がやってきた。
「おじさん、焼き鳥3本ね」
「おう、ちょっと待っててな」
「うん」
親父が自分の焼き鳥を焼いてくれるのを待つ若者は、料理屋の玄関に盛られた塩を見つけ、親父に声をかけた。
「おじさん、なんで塩なんか置いてあんの? まくの?」
「これはな、縁起がいいんだよ。塩は清めるって言ってな」
「へーえ…」
親父の説明を聞いても若者はなんとなく腑に落ちない顔であった。
若者よ、これは「盛り塩」という昔からの日本の風習だ。
君が食べる焼き鳥の味つけに使うものではないから安心してくれ。【み】