50年代の渋谷三角地帯(1)
■火災保険特殊地図とは
火災保険特殊地図は、昭和初期から昭和30年頃まで作られた地図である。縮尺は概ね1/1,000、実際に測量して作成されたためかなり正確で、現在の地図と重ねて位置関係の確認もできる。建物名や用途、木造スレート葺などの建物構造、生垣やトタン塀まで1軒1軒記してあり、昔の街並みを推測する大きな助けになる。
「常設展示制作に伴う調査報告2(大型模型2)ヤミ市模型の調査と展示」は江戸東京博物館に展示されている闇市の模型を制作するにあたっての調査報告書だが、その中に1950年代の渋谷の火災保険特殊地図が掲載されている。場所は109から道玄坂小路にかけての一帯。かつて恋文横丁があり、三角地帯と呼ばれていた一画だ。
■建物の用途
道玄坂側には衣料品店が目立つ。特に道玄坂小路に出るメリケン横丁には古着屋が集中している。
また中心部には飲食店が多く、小さな規模のバー、中華料理店が目立つ。ひときわ広い「キリンビヤホール」が目をひく。中華料理店が目立つのは、この一画が台湾人を中心とした闇市から発展してきたためだろう。戦争直後この一画には台湾人が集中し、一時ここを中国の租界にしようとする動きまであったという。
現在は商業・業務系の用途一色のこの地だが、当時は道玄坂小路沿い材木店、鉄工所なども見られた。
▼参考資料
東京都江戸東京博物館調査報告書第2集「常設展示制作に伴う調査報告2(大型模型2)
ヤミ市模型の調査と展示」東京都江戸東京博物館 1994.10
東京都江戸東京博物館調査報告書第2集「常設展示制作に伴う調査報告2(大型模型2)
ヤミ市模型の調査と展示」東京都江戸東京博物館 1994.10