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2020年1月

2020.01.30

さくら新道(3):さくら新道の終焉

 「さくら新道(1)」で紹介し、「さくら新道(2)」で火災後の様子を紹介した王子飛鳥山下のさくら新道だが、そこで営業を続けていた「スナックまち子」が2019年いっぱいで営業を終了したと聞いてまた現地を訪れた。

 2012年の火災で消失した部分はフェンスで囲まれ、火災後も営業していた「みよし」「まち子」ともに空家となっていた。そしてまち子の壁面の「解体工事のお知らせ」には2020年の2月3日から解体にとりかかる旨が記してあった。オリンピック前から約55年間続いた、王子のホームから見える奇妙な建物群、さくら新道の歴史はここに終わる。

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■2012年の火災で消失した部分はフェンスで囲まれた空地に。
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■「まち子」「みよし」は火災後も営業を続けていた。
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■解体のお知らせ。2020年2月3日から解体開始。

 しかしまち子のドアに、「今後お店を再開する際にはツイッターにてお知らせ致します」と移転再開を匂わせる張り紙があった。さくら新道の記憶を受け継ぐ店が、またどこか別の場所で再開することを期待しよう。【吉】
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2020.01.29

岸町2丁目:台地のふところの細街路ラビリンス

 京浜東北線赤羽〜上野間の西側には鉄道に沿うように本郷台の末端の崖線が伸びている。
 その中でも斜面の魅力が凝縮している東十条〜王子間に広がる北区岸町の2丁目について紹介する。

【台地のふところに食い込む細街路網】

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■地形と斜面緑地、道路網(等高線は東京地形地図 ©2009-2015 gridscapes.net による)

 この地区には国土地理院の地図にも表示されないような、幅員2mにも満たない細街路が毛細血管のように伸びている。低地側からアクセスすると斜面を上るにつれ道が細くなり、民家と民家の間を縫うように進み、やがて斜面に吸い込まれてなくなっていくような感覚を覚える。
 実際延長約500mのこの区間で台地上と低地を結ぶ道は4本と極めて少なく、斜面に向かって伸びる道は大多数が斜面の中腹で行き止まりとなっている。そのため道のつきあたりに斜面緑地や擁壁がたちはだかり、その向こうの高い位置に台地上の建物が並ぶという特徴ある景観がつくりだされている。

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■低地から崖線を見る1,2
02 ■低地から崖線を見る 3,4
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■低地から崖線を見る 5,6
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■台地の末端、左は斜面緑地、右は民家
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【坂と階段】
 街路が斜面にさしかかる場所には多くの坂や階段がある。細街路はその多くが私道であり、公道にはみられない独特の形状をしており、道路の狭い幅員と擁壁、密集する民家が台地のふところに身を隠すような適度に囲まれた心地よい空間をつくりだしている。
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■岸町の坂と階段

 なお私道で通り抜けはできないが、台地上の開けた眺望から狭く湿った斜面の階段を通り、再び低地の町並みで開けるという、崖線を横切る際の空間変化の楽しみを全て詰め込んだような階段がある。
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■台地上より。道のつきあたりに空間が開ける。
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■台地端より。民家の陰に階段が伸びていく。
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■階段を降りる。民家と擁壁のすきまに消えていく階段。
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■民家と擁壁の間に伸びる暗く湿った階段。

【眺望】
 台地上の末端を歩くと、ところどころで突然東京低地に向けたドラマチックな眺望が広がる。それまで意識していなかった自分の高さ方向の位置を唐突につきつけれられる驚きは崖線沿いを歩く楽しみの一つだ。
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■眺望が開ける地点

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