鯨ヶ丘:坂と階段と眠る街(1)
【寝そべる鯨】
鯨ヶ丘は久慈山地の末端、常陸太田市内の比高約20mの台地である。台地の頂部は平坦で、形が平地に寝そべった鯨のように見えることから鯨ヶ丘と呼ばれるようになったという説がある。
台地の中央を棚倉街道が走り、頂部には二筋の町並みが形成されている。鯨ヶ丘は近世は商業の町として、明治以降も役場や商店が並ぶ中心市街地であったが、現在では以前水田であった低地にバイパスが通り、その沿道に大規模商業施設が集積し、役所も移転し、市の中心は低地に移動した。その結果鯨ヶ丘は商業地としては衰退したが、現在でも旧太田町役場や江戸期・明治期の商家建築などが、入口を閉ざした店舗も多い商店街沿いに並んでいる。現在地元のグループにより商店街活性化の取り組みが行われ、空店舗を活用した新しい店舗も立地しつつある。
■鯨ヶ丘の地形
幅8mほどの道路沿いに70年代で時間が止まったような商店が並び、ほとんど車も人も通らない街を歩いているとあたかも白昼夢をみているかのような感覚に襲われる。また夕刻に訪れてみると街の電気を点したまま自分以外の人間が忽然と消えてしまったような、不吉な夢の世界に入り込んでしまった感覚を覚える。
■水底に沈んだような夕刻の町
台地なので、当然その末端部には坂や階段が発達する。鯨ヶ丘でも広い坂については「太田七坂」と愛称をつけ名所として打ち出しているが、実はそれ以外にも、入口を見過ごしてしまうような細い坂があり、そこにも大変魅力的な空間が隠されているのだ。太田七坂や数多くの歴史的建造物については他のサイトに譲るとして、ここでは案内図にも載っていない小さな坂について紹介していきたい。
■鯨ヶ丘の坂の分布
【01 観音坂】
鯨ヶ丘東側の住宅地から農地の脇を通り、簡易裁判所と変電所の間を抜け、きくち薬品商会横に出る坂。坂下にある坂の由来を記した銘板はほとんど消えているが、「観音坂」と読める。途中でクランク状に屈曲しているので、丘の上からは坂の入り口とわかりにくい。
■坂下。右側に由来を記した銘板。
■変電所が見える
■坂上から常陸太田市街を見る
【02 鯨ヶ丘トンネル東の坂】
鯨ヶ丘の東西を貫く鯨ヶ丘トンネル脇の坂。住宅と住宅の間から擁壁の下を上っていくルートとトンネル抗口のすぐ脇から上るルートがあり途中で合流する。途中で分岐する急階段があるがこれは行き止まりである。丘の上で磯山鉄工所横に出る。
■鯨ヶ丘トンネル。黒い手摺と白い手摺の2ルート
■白いルート入口
■黒い手摺のルートと合流。突き当り右の白い手摺は行き止まり
■坂上より
【03 法然寺墓地の坂】
法然寺の墓地のある谷を抜け法然寺の境内に至る坂。
■坂下
■法然寺入口
【04 真福寺横の坂】
住宅の間を抜け真福寺の横を通り丘の上で和菓子店なべやの横に出る坂。なべやの木造の建物はなかなか雰囲気がある。
■坂への入口
■真福寺下
■坂上。和菓子店なべやの横に出る
【05 板谷坂】
太田七坂の一つ。車も通れるほどの幅員でありながら最上部が階段になっているので車は通らない。道沿いには時代物の消火栓や、美容院の壁の下から石の亀が覗いていたりと細かい部分も面白い。
■坂下より
■坂上から常陸太田市街を見る
■美容室の壁面下からのぞく亀
■坂の途中の消火栓
その2に続く【吉】
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