渋谷区本町:崖下の袋小路
【堤の上の水道道路】
新宿から甲州街道を西に1.5kmほど向かった北側に渋谷区本町が広がっている。JR渋谷駅から離れた渋谷区の隅の方に本町があるのは奇妙だが、もともとこの場所の町名は「幡ヶ谷本町」だったものを「幡ヶ谷」を略してしまったために渋谷区の中心のような名前になってしまったという。
(「東京地形図 on the Google Earth」gridscapes.netをもとに作成)
本町の南を「水道道路」と呼ばれる道路が通過している。西新宿の超高層ビル街がもともと淀橋浄水場であったのはご存知のとおりだが、その建設に伴い玉川上水の水を世田谷区和泉付近から浄水場まで運ぶためにつくられた水路だった道だ。
水路は水を自然流下させるため、浄水場にむかって一定以上の勾配を保った下り坂にしなければならないわけだが、そのため周辺の地形によっては掘割をつくったり築堤を築いて通さなければならない。本町では水道道路は基本的に築堤の上を通っており、周囲の町は水道道路より低くなっている。
【児童公園の隅に隠された階段】
水道道路沿い、南側に接して「本町南児童遊園地」という児童公園がある。堤の上につくられた公園で、南側は崖になっているため基本的にフェンスで遮られている。
しかしよく見ると、公園の南西端に崖下に下りていく狭く急な階段を見つけることができる。これはどこへ繋がっているのか。
■崖下に向かう階段。急で狭い。
階段を降りてみると渋谷区リサイクルセンター裏の崖下、民家が4軒並んだ場所に出た。一方はアパートで遮られ、もう一方は幡ヶ谷変電所横の階段で遮られている。ここから今来た道と逆方向へ抜けるためには民家と民家の間の狭い隙間を通らなければならないようだ。
■崖下の空間。右が渋谷区リサイクルセンター、左が崖下の民家。つきあたりは幡ヶ谷変電所の階段で行き止まり。
■民家と民家の間。狭い。
思い切って民家の間をすり抜けると、人が通れるくらいの空間に敷石を置いた明らかな通路が現れ、敷石をたどり水道道路と逆側の道路に出ることができた。
■逆側の入口からは敷石を置いた通路が
図示すると下図のようになっている。この一画には8軒の民家があり、中に通路(青点線)が巡らされており、どの家からも南側の道路に出られるようになっている。一方家と家の間が狭いため、児童公園の階段には北側の4軒の裏口しか通じていない。災害時のことを考えると両方に抜けられるのが望ましいのは確かだが、それにしても4軒の裏口と繋ぐために公園の片隅に設けられたこの階段、見かけとは裏腹になんとも贅沢な階段である。
■階段と崖下の民家の位置関係
【吉】