代々木4丁目:高低差が生み出した3棟のマンションの複雑な空間
【河骨川の谷と3棟のマンション】
■周囲の地形(「東京地形図 on the Google Earth」gridscapes.netをもとに作成)
山手通りを初台交差点から代々木八幡方面へ少し向かうと、東側に河骨川上流の深い谷が開ける。この谷へ下りる1本の階段があり、階段に並んで山手通り沿いに「ブランノワール代々木」「アクサス渋谷初台」「ハイツ参宮橋」と3棟のマンションが建っている。参宮橋と初台の中間地点にあり、どちらの地名もブランド力としては優劣つけがたいため、3棟がそれぞれ別の地名を冠しているのが面白い。それはさておき。
3棟に共通するのは谷底に立地しながら山手通りに面しているという点だ。だが道路の法面の幅があるため3棟とも山手通りから7、8m後退している。この特殊な立地条件をクリアするために3棟がそれぞれに工夫をした結果、この一体には実に複雑な空間が生み出されている。
■谷底へ下りる階段
■3棟のマンションまわりの複雑な空間
【広大なアプローチとデッドスペース】
「ブランノワール代々木」「アクサス渋谷初台」はいずれもほぼ建物の間口いっぱいに山手通りにアプローチを延ばしており、非常に広大なアプローチとなっている。
一方「ハイツ参宮橋」は幅約2mのアプローチを延ばし1階と地下1階へ振り分け、さらにつづら折りの階段を設け地下2階および駐輪場へのアクセスを確保している。それ以外の部分はデッドスペースとなっており、角地に大きなデッドスペース(デッドスペース①)が広がるという奇妙な風景がつくり出されている。なお、「ブランノワール代々木」「アクサス渋谷初台」の間にも広いデッドスペース(デッドスペース②)が残っている。
■ハイツ参宮橋のつづら折り階段。美しい。
■デッドスペース①。管理用階段がある。道路に面する平坦な部分までフェンスで囲まれている。
■デッドスペース②。管理用階段がある。
■デッドスペース②の管理用階段入口
■3棟とも山手通りから7、8m後退している。林立するフェンス。
3次元的な、高低差に富んだ空間であるため、フェンスで囲まれた場所が多く、フェンスが林立しているのもこの一帯の特徴だ。地形と建設技術のせめぎ合いがつくりだした複雑で非合理的な空間。だが非合理なるがゆえに惹かれる空間だ。【吉】