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1998.01.20

アキバで五エ門を見た日

 秋葉原の某パソコン店のエレベータにひとりで乗っていたら、思いがけない人が乗り込んできた。声優の井上真樹夫さんである。
 「井上さんでは?」と声をかけると、「ああ、はい、そうですが…」ホンモノだ!
 井上さんは「巨人の星」の花形満や「新ルパン三世」の五エ門の声でおなじみのベテラン声優である。

 実は、私は高校から短大にかけて、声優の“おっかけ”をしていた。
 録音スタジオ前で声優さんの出入りを待ったり、デパートの屋上から果ては今はなき日劇にいたるまでイベントめぐりの日々を送っていたのである。今から15年以上も前の話だ。まだ「オタク」という言葉は生まれていなかったが、懐かしのアニメソングは必須科目だったし、敵役キャラの魅力を熱く語ったり、男性キャラクタ同士のホモセクシャルな物語を紡いだり、当時の私たちはまぎれもなくオタク、言ってみれば「原始オタク」だった。

 当時の私のお目当ての声優は、件の井上真樹夫であった。
 雨の日も風の日も日照りの日も雪の日も、大久保のタバックスタジオ、赤坂の東北新社や新坂スタジオなどに通っていたあの頃。アニメの録音はだいたい2時間程度のものだったが、声優さんのスタジオ入りの時間に合わせて駆けつけ、彼らが録音を終えて帰るのをひたすら待つ。
 近所の喫茶店あたりで時間をつぶせばいいだろうと思うかもしれないが、それでは駄目なのだ。役柄によっては録音の途中で帰ってしまう場合もあるので、スタジオの前を動くわけにはいかない。そんなわけで、あたかもハチ公のごとく待ちつづけるわけだが、だからといって何があるというわけじゃない。サインを貰って握手しておしまい。毎週それの繰り返し。
 中には要領のいいヤツもいて、贔屓の声優さんと親しくなって個人的におつきあいしている娘もいたっけ。人気声優のMとかKなどは、ファンの娘さんたちとずいぶんイイことしてたらしいというのが、当時のもっぱらの噂。
 でも、ファンに対して親切な対応をしてくれる声優さんも多く、大竹宏さんはサインに必ずイラストを描いてくれたし、神谷明さんや井上真樹夫さんなどは、夜遅くまでスタジオ前にいる我々を非常に心配してくれた。古谷徹さんや古川登志夫さんもファンサービスのいい声優さんだった。顔見知りのファンもそうでないファンもわけへだてなく声をかけてくれたものだ。

 しかし、まさか今ごろになって井上さんに会えるとは思わなかったよ、しかも秋葉原で。
 井上さんはしなびたジジイになって元おっかけの夢を砕くようなことをせず、すっかり素敵なナイスミドルになっておられ、感激もひとしおであった。一瞬の再会だったけれど、一生の思い出になりそうだ。

 ちなみに井上さんはウィンドウズユーザとのこと。まさかこのページは読んでおられまいが、もし、もしも、ご覧になったらメールください。待ってます。【み】

1998 01 20 10:01 PM [タレント] | 固定リンク

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